話せない人

場面緘黙症と情緒不安定な日々

緘黙時代の友達

緘黙状態で、友達を作るのは難しい。僕の友達は学校以外の場所にしか居なかった。

小学校に入学する前、近所に住んでいる男の子、Y君とよく遊んだ。
彼は僕が緘黙であることを知らず、僕も普通に話すことが出来た。ゲームをしたり、ブロックを組み立てたりして遊んだ。初めて出来た友達が嬉しくて、毎日のようにその子の家に遊びに行った。
「ごめんね。今日はYは水泳教室でいないの」
彼のお母さんにそう言われると、寂しかった。

小学校に入学すると、僕は話せない。
Y君に話しかけられても、なにも応えることが出来ない。
「しかもふ君は、どうして学校では話せないの?」
僕にもそれがわからなかった。学校では話せない自分になってしまう。みんなが僕を話せない人間だと思っているから、話せないのだろうか。
話せる自分と、話せない自分の矛盾を抱えながら、なんとなく、Y君とも遊ばなくなった。

夏休みになると、従兄弟の家によく泊まりに行った。
リュックサックに着替えを詰め込んで、電車で5駅離れた家へと出かけた。従兄弟と遊ぶのが楽しくて、とにかく自由に話せるというのがいい。
従兄弟の家には兄と行くことが多かったけれど、次第に一人で行くようになった。
「なんでこんなに楽しいのに、兄は一緒に来ないのだろう?」と思っていた。
兄には電車に乗って出かけなくても、すぐ近くにたくさん友達がいるのだ。僕のように遠くに行かなければ遊べないというわけではないのだから、それも当然だろうと、今になって思う。